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ロレックス愛好家の必須科目「オーバーホール」 基礎から実践まで

ロレックス好きであれば、「ロレックスを長く使うためにメンテナンスが重要である」ということは、誰もが聞いたことがあるはずだ。
いかに頑丈なロレックスといっても、機械式腕時計は精密機械である。適切なメンテナンスを怠っていては、どこかに不具合は出てきてしまうし、そうなるとせっかくのロレックスを長く愛用することができなくなってしまう。
ロレックス愛好家にとって、正しいメンテナンスの知識は必須科目といっていいだろう。
今回はロレックスのメンテナンスの中でも比較的馴染みが薄く、それでいて重要性の高いオーバーホールについて、あらためて基本的なところから体験談も交えて詳しく解説する。

 

・腕時計メンテナンスの両輪

 

腕時計のメンテナンスには2つの種類がある。

①数年のスパンでプロに依頼するオーバーホール
②自分で行う日常的な手入れ

このふたつを車の両輪としてきちんと行っていくことが、腕時計を長く使用し続けるために重要である。
今回は、特に①のオーバーホールについて扱うが、②の日常的な手入れも重要であることは言うまでもない。

 

・オーバーホールとは?

 

そもそもオーバーホールとは具体的にはどんなことを指す言葉なのだろうか。

オーバーホールは、日本語にすると「分解洗浄」である。
つまり、腕時計を一度解体し、細かな部品一つ一つの点検、洗浄を行い、組み立て直すという一連の作業のことである。ブランドやモデルによって、そのやり方は少しずつ異なる。

 

・オーバーホールの必要性

 

では、なぜオーバーホールが必要なのだろうか。
オーバーホールの主な目的として挙げられるのが、部品と部品の間に差されている油の差し直しである。
部品同士を潤滑に動かす役割を担っている油だが、時間の経過とともに劣化してしまう。
油が劣化してくると、部品が滑らかに動きにくくなり、針が遅れたり部品が壊れたりといった問題が発生しやすくなる。また、最終的には部品のサビの原因ともなる。
つまり、定期的に油を差し直して常に潤滑を保っておかないと、時計に大きなダメージを与えてしまう可能性が高くなるのである。
さらに、防水パッキンのような劣化しやすい部品もオーバーホールの際に交換することで、常に最高のコンディションを保つことができる。
また、部品の磨耗や破損はオーバーホールで点検しないと見つけにくいため、そういった故障につながる不具合のタネを早期に発見するのにもオーバーホールは有用だ。
きわめて精巧に作られている機械式腕時計だが、日夜休むことなく動き続けている上に、日常で受けるさまざまな刺激も相まって、使用年数が長くなってくると時刻表示に狂いが生じたり、内部が劣化してくることは避けられない。

そのような内部の経年的な変化を修復し、元通りのコンディションを取り戻すことができるのは、熟練の職人によるオーバーホールだけなのだ。

 

・オーバーホールのタイミング

 

オーバーホールは、いつ、どれくらいの頻度で行えばよいのだろうか。
一般的には、3〜5年間に1回はオーバーホールに出すべきだといわれてきた。

しかし近年では、油の質の向上により、頻繁にオーバーホールを行う必要性が薄れてきているともいわれる。
オーバーホールは費用も決して安くはないことを考えると、今の状況では5年に1回程度が大まかな目安として考えられる。

もちろん、実際には使用頻度や環境が各ユーザーによって異なるため、その人、そしてその時計に合ったタイミングがある。
いつオーバーホールすればよいかわからない場合は、正規店や時計店の専門家に腕時計を見てもらって決めるのが間違いないだろう。

 

・オーバーホールに要する時間と費用

 

オーバーホールには、どれくらいの時間と費用がかかるのかも気になるところだ。

モデルによって機能や機構も異なるため、当然費用も変わってくるが、目安として、ロレックスの正規店にオーバーホールを依頼した場合には、おおよそ6万円から9万円程度の費用がかかる。
これはオーバーホールそのものにかかる費用であり、オーバーホールの過程で部品の交換があった場合、その分の部品代等がさらに上乗せされる。

時計店に依頼する場合は、店舗によっても異なるが、およそ4万円以内になるのが一般的である。

かかる時間の方はどうだろうか。これも目安だが、オーバーホールに出してから、およそ1ヶ月ほどで手元に戻ってくると考えておけばよいだろう。
分解、洗浄等、繊細で複雑な工程が多いため、どうしてもひと月程度の時間はかかるのである。

 

・オーバーホール体験談

 

ここまでオーバーホールの概要について説明してきたが、これだけでは結局どうしたらいいのかよくわからないことも多いだろう。
そこで、ここからはオーバーホールに出すというのがどういうことなのか、実際のところを、2人のロレックスコレクターのオーバーホール体験を通じて紹介したい。

 

Case1. 3stagram3さん

 

ーー3stagram3さんが、時計をオーバーホールに出す頻度を教えてください。

腕時計を集め始めて10年になりますが、その間に3回、オーバーホールに出しました。私の場合は、何年に1回と厳密に期間を決めているわけではなくて、時計の調子が悪くなってきて、マイルールで決めている誤差を超えてきたら、プロに委ねるという感じです。

 

ーーマイルールですか?

はい。機械式の時計であれば誤差が5〜10分になってきたらメンテナンスに出す、というのが自分の中でのルールです。
機械式でも、1、2分の誤差だったら許容できるのですが、さすがに5分を超えてくると厳しいものがあるので(笑)

 

ーーオーバーホールはどこに依頼していますか?r

ロレックスの時計は正規店や購入補償の店舗に依頼します。他ブランドのものでしたら、一般的な時計店にお願いするときもありますね。

 

ーーお店選びの理由がありましたら教えてください。

もちろん家から近いというのも1つの理由なんですが、それに加えて、店主の方が1級時計修理技能士*をお持ちでしっかりとした技術があること、そして口コミがよかったことが挙げられます。

*国家資格である技能検定制度の一種で、都道府県職業能力開発協会が実施する、時計修理に関する学科及び実技試験に合格した技師。

 

ーーその他、ロレックスのメンテナンスに関して知っておいたほうがいいことはありますか。

オーバーホールも重要ですが、日常的なメンテナンスもそれと同じかそれ以上に大切だと思います。
私は、その日に着けた時計を夜に磨くことを日課としています。それから、たとえ防水の時計であっても、必要以上に水に近づけないことや、磁気にも注意しています。
オーバーホールは、安いものではないうえに、時計そのものにもある程度の負担がかかってしまうことは避けられないものですから、日頃から大切に使っていくことで、オーバーホールの頻度も減らしていくのが一番理想的だと考えています。

 

 

Case2. Mさん

 

ーーご自身がオーバーホールに出されたエピソードについて教えてください。

つい先日なのですが、20歳の誕生日に父から譲り受けたGMTマスター(Ref.16700)のベゼルを黒からペプシに変更しようと思って、ロレックス正規店にメンテナンスを依頼しました。
メンテナンスに伴って見積もりを出してもらったところ、精度不良であると言われてしまいました。修理履歴を確認したところ、驚きの18年前でして(笑)
すぐにベゼル交換とともに、見積もりに記載されていた内容でオーバーホールをお願いしました。
結果として、オーバーホールとベゼル交換で、新品のようにピカピカになって帰ってきてくれました。本当に満足の仕上がりでした!

 

ーーどのくらいの費用がかかりましたか?

オーバーホール単体では7万円でした。点検の結果、クリスタルとリューズを交換することになったので、それらで2万円かかり、トータルで9万円ほどかかりました。

 

ーーつい先日オーバーホールが完了したとのことですが、次回は何年後にしよう、という考えはありますか?

一般的には3〜5年に1回といわれているようですが、今回、ロレックスの店員さんに「次回は10年後で大丈夫ですよ」と言われました。特に問題がなければ、そのようにすると思いますね。

 

ーー次回もロレックス正規店に依頼しようと思いますか?

はい。費用は多少高くつきますが、このGMTは成人祝いに譲り受けた非常に思い入れのある時計なので、安心して任せられる正規店がいいかなと思います。
ロレックスでのオーバーホール料金には、ライトポリッシュ代も含まれているのがいいところですね。
オーバーホールは、時計を預けてから帰ってくるまでおよそ1ヶ月かかります。ロレックス正規店なら失敗することもないので安心して待っていることができます(笑)
それに、仮に部品交換が必要になった場合も、正規店ならすぐに対応していただけるのでそこもメリットだと思いますね。

 

ーー時計のメンテナンスとして日常的に行なっていることはありますか?

ワインディングマシーンを使用しない派なので、手持ちの機械式時計は、最低でも1ヶ月に1回は使用して中の機械を動かすように心がけています。
最近では、日常的な手入れとしてクリスタルガードを使って掃除とコーティングを行うことが習慣になっています。

 

ーーオーバーホールやメンテナンスに関して、見落としがちな点はありますか?

機械式時計を所有していると、使用の有無に関わらず、5〜10年に1回のオーバーホールは避けられないものです。
一生モノの時計は、何度もメンテナンスに出すことになります。
メンテナンスにかかる費用も念頭に置いて時計を購入する必要があると思います。
あと、何本もコレクションする場合、メンテナンス周期が重ならないよう、短期間で何本も買わないほうがいいかもしれません(笑)
おすすめしたいのは、人生の節目や一大イベント、大きな目標を達成した時などに合わせて購入するというやり方です。そのほうが時計への思い入れもひとしおですし、ちょうどいい具合に時計の購入期間も空くので、メンテナンス時期も被らないと思います。

 

今回は、機械式時計には必要不可欠なオーバーホールについて、基本からその実態までを解説した。これまでなんとなくオーバーホールを敬遠していた読者がいたとしたら、ぜひ一度正規店や信頼できる時計店に持ち込んで、オーバーホールや日常のメンテナンスについて相談してみてほしい。適切なアドバイスがもらえるはずだ。それが、ロレックスと長く付き合っていくための第一歩である。