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働く男の腕に光るのは妻とともに手に入れた念願のデイトナ

デイトナを正規店で手に入れたいと願うコレクターは多い。今回のコレクターもその一人である。数年にもわたって探し続け、ついにデイトナを手に入れるまでには、良き理解者である妻の支えがあった。そして入手したデイトナは、大切に保管するのではなく、傷を恐れず使っているのだという。そこには、コレクターにとっての原風景ともいうべき、あるイメージがあった。イメージを自分自身で体現するまでの道のりを聞いた。

 

取材協力:sa16/きゅーびんさん (https://twitter.com/EICHI49

文:マピ

画像提供:sa16/きゅーびんさん

 

ーー早速ですが、ロレックスにハマった第一歩を教えてください。

 

婚約指輪のお返しで、妻からプレゼントをもらえるということになったんです。それで、腕時計にしてもらおうと決めたところ、妻は「本当に欲しい腕時計にしたらどう?」と言ってくれました。その言葉を聞いた時、思い浮かんだのがロレックスでした。並行輸入品店に行き、いくつか試着したところデイトナ(Ref. 116500LN)の黒文字盤が非常に魅力的に感じられ、これを手に入れるぞと決意したのがきっかけです。

 

ーー何故そこでロレックスが浮かんだのでしょうか?

 

一つには祖父の影響ですかね。建設業に携わっていた祖父の腕にあった、長年使い込まれて傷が味となったデイトジャスト(Ref.16013)が思い浮かびました。それから二つ目として、上京する際に親からプレゼントでロレックスをもらったという友人がいたんです。それで、自分の中でロレックスはギフトとして人から受け取るものというイメージがありました。ちょうど妻からのプレゼントという形だったので、自分の持つイメージと合致して思い浮かんだのだと思います。

祖父亡き現在は父に受け継がれたデイトジャスト(Ref.16013)

 

ーーデイトナを入手しようと決意してからの過程について教えていただけますか。

 

年数としては3~4年かかりましたね。正規店を回っていました。仕事柄出張が多いので、地方のショップにも足を伸ばしました。初めは正規店のスタッフにもいわゆる塩対応をされていたんです(笑)しかし、妻が協力してくれるとのことで、ショップに何度も足を運び店舗スタッフと打ち解けてくれました。その甲斐もあって、仲の良い店員さんができましたね。それから、ネット上でもブログを読むようになりました。気づけば、オフ会をするほどの仲間ができていました。オフ会だと、苦労話をつまみに延々とお酒を楽しむことができますし、新しいつながりが生まれた喜びも大きいですね。みなさんそれぞれ、色々な形で苦労しながら憧れのモデルを入手しているので、話に花が咲きます。実はデイトナを入手する前にスカイドゥエラー(Ref. 326934)に出会ってしまって、運命を感じて購入しました。寄り道してしまいましたね(笑)

デイトナマラソンの途中に出会ったスカイドゥエラー(Ref. 326934)

 

デイトナが手に入るまで、スカイドゥエラーの他にも、サブマリーナやエクスプローラーなどももちろん見ました。「どうしてもこれが欲しい」というように的を絞らなければ選択肢は広がるな、と思うものの、やはり自分が欲しいのはデイトナだな、とその度に再確認していました。

 

ーーぜひデイトナが手に入ったその日のお話をお聞かせください。

 

クリスマス直前の日、いつものように正規店を訪ねると、「今日はクリスマスも近いですね。シャンパンのご用意がありますので、お車でなければいかがですか?」と言われ、奥に通されました。「実は……」と店員さんが切り出したのですが、まるでクリスマスプレゼントのように、探していたデイトナ(Ref. 116500LN)があったんです。本当に正規店にデイトナは存在して、正規価格で手に入るんだ、と驚きで手が震えたのをよく覚えています。

 

ーー奥様にもすぐご連絡なさったんですか?

 

もちろんすぐに電話しました。ところが、タイミングが悪かったようで、「子供がいるのにそれどころじゃないでしょう」と怒られてしまって……諦められるはずもなく、内緒で購入しました。そして実は今でも妻にはデイトナの話をしていないんです(笑)

光を受けて輝く念願のデイトナ(Ref. 116500LN)

 

ーーそうなんですか(笑) それだけ苦労して手に入ったデイトナですから、やはり鑑賞がメインですか?

 

いいえ。先述の祖父の話や、仲の良い友人の父が、ロレックスを腕にはめたままセメントに手を突っ込んで仕事する姿を見てきたので、そのような「働く男」の腕で、仕事の勲章のように、傷や汚れと共にあるロレックスの姿が、私の中に強く印象付けられていたんです。そのイメージの影響で、自分自身も鑑賞ではなく「使う」のがメインですね。もちろん大切にはしています。ですが、過剰に守るのではなく、着けて楽しむ。そしていずれは、箔のついたデイトナを息子に譲れたらなあ、と考えています。
 

青空とスカイドゥエラー(Ref.326934)

 

数年間、正規店を回り続けてやっと出会えた憧れのデイトナ。出会えた瞬間の興奮はひとしおだったことだろう。そして、かつて見た働く男たちと同じように、いつでもその腕に相棒を着け、苦楽を共にしながら年月を重ねていく。ロレックスには物語が付き物だが、このように愛用されているのだから、それも当然なのかもしれない。