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2020.02.02

必ず抑えておきたい”メンテナンス先の選び方” かめ吉 箕浦店長インタビュー

 

 

いい時計にはいつまでも時を刻んでほしい。
時計愛好家なら誰でもそう思っているだろうが、そのためには、きちんとしたメンテナンスが欠かせない。
特に、ロレックスのような高級時計であれば、長く使うためには定期的なオーバーホールも避けて通ることはできない。
メンテナンスやオーバーホールについての正しい知識を得ることは、時計愛好家としての必須項目といってもいいだろう。

今回は、“まじめなとけいや”を掲げ、顧客への親切丁寧なアフターフォローにも定評のある「かめ吉」の箕浦誠店長に、
ロレックスを長く愛用するために必要な日常のメンテナンスやオーバーホールについて伺った。

 

―箕浦店長、今日はロレックスのメンテナンスについてお聞かせください。早速ですが、ロレックスの日常的なメンテナンスを自分でしようとする場合、どのようなことをどれくらいの頻度でするとよいのでしょうか。

 

ロレックスの場合、日常的なメンテナンスは基本的に必要ありません。夏場など汗をかいた場合に、かるく布で拭くぐらいです。汗でステンレスが錆びることも多少ありますが、ロレックスのステンレスは丈夫なので、ほとんど気にしなくていいと思います。他にあるとしたら、ブレスレットの間に何か入って気になるときに手入れをするくらいです。ステンレスではなく革ベルトでも、磨いたりクリームを塗ったりというような手入れはほとんど必要ありません。それでもハードにつけられますし、それがやはりロレックスが実用性ナンバーワンであるということの証だと思います。ロレックスのお手入れは、定期的なオーバーホールをメインに考えて大丈夫です。

 

―そうなのですね。では、定期的なオーバーホールというのはどれくらいの頻度で行うのがよいのでしょうか。

 

オーバーホールの頻度は、時計を毎日使う方でも一週間に1回しか使わない方でも、使用頻度に関係なく期間で決めた方がよいと思います。だいたい4~5年に1回くらいが適切でしょう。というのも、内部に使われているオイルが、それくらいの時間が経つと使用頻度に関わらず劣化してきてしまうのです。

たまに10年くらいメンテナンスをしていなくても動くという方もいますが、実際に開けてみると、やはり中のオイルは劣化しているのです。
時計は簡単にいえば歯車と油でできていますので、その油がなくなると歯車は摩耗してしまいます。丈夫なのでそれでも動きはしますが、その状態ではやはり傷んでしまいますね。

 

―見た目では気づかないうちに内部の機構が傷んでしまうのですね。

オーバーホールに出した後は、どのような流れで進んでいくのでしょうか。

 

当店の場合、お預かりしてから業者が中を見て、2週間ほどで見積もりが出ますので、その見積もりをお客様にご連絡します。その見積もり内容をお客様にご了承いただけたら作業をすすめ、完了次第納品させていただくという流れです。全部でやはり1か月はかかってしまうので、オーバーホールに出すのが億劫になったり、出しそびれたりしてしまう方もいらっしゃいますが、やはり4~5年に1回はオーバーホールでしっかりメンテナンスすることをおすすめします。

 

専門の技術者により細かい部品をひとつひとつ丁寧に解体していき点検を行う様子
画像元:かめ吉より

 

―オーバーホールをする際の選択肢としては、やはりロレックスの正規店と時計専門店のような民間業者の2つでしょうか。

 

そうですね。基本料金でいえば当店も正規店と同じくらいかかるのですが、正規店では基本的に無条件で部品を交換されてしまいます。基本料金に部品代が乗ってきますので、最終的には正規店のオーバーホール料金はやはり高くなります。

あと、ネットなどには極端に安いオーバーホールを行う業者もあるのですが、そういったところはあまりお勧めできません。安すぎるところでは、当然質もそれ相応になってしまいます。オーバーホールは中のことなので素人には見えません。だからこそやはり信頼できるところに出すのがよいと思います。

 

―状態やモデルによっても違うと思いますが、ロレックスの正規店や民間業者でのオーバーホール費用の相場はどれぐらいなのでしょうか。

 

クロノグラフのないシンプルなもので基本料金が4~5万円くらいです。正規店に出した場合は、それに部品の交換代が加わるので、もう少し高くなって5~6万円くらいになります。その分、正規店ではロレックスの保証がつくので安心感はあると思います。

もちろん民間の業者でも独自の保証はつけますし、ロレックスは人気で部品もたくさん出回っているので、部品交換が必要な際にも純正品を使います。

 

―交換される部品に関してもお聞きしたいのですが。

 

ロレックスの現行品であれば、基本的にどこの業者も純正部品で直します。ただ、民間業者では全ての部品が手に入るわけではないので、重大なトラブルの場合は正規店に出した方が間違いありません。

ロレックスのすごいところは、毎日使って壊れてもすぐに直せるというところです。民間業者でもちゃんと直ります。修理費用に10万円以上かかることはなかなかありません。しかも部品がたくさんあるので国内で直せて早いです。ブランドによっては3か月かかることもありますが、ロレックスならほとんどの場合1か月半で直ります。このように安心感が強いところがロレックスのブランド力につながっているのだと思います。

 

―なるほど。ちなみに、民間業者のなかで優良業者かそうでないかを見分けるときに金額以外のポイントはありますか?

 

難しいですね。先ほど申し上げたように金額が不自然に安くないかというのと、あとは優良業者ではどこも保証をつけますので、保証の有無でしょうか。

 

―もともとが価値のあるものですし、メンテナンスもそれに見合ったものが望ましいということですね。では、自分自身が長く使っていく上でメンテナンスが大事なのはいうまでもありませんが、メンテナンスの状態によって買い取り価格が変わることもあるのでしょうか。買い取りの際に外観だけでなく中も見て値付けされるのでしょうか。

 

もちろんアンティークモデルの場合は、預かって中を見て、違う部品が入っていないか確認します。しかし現行品ならば、不具合があれば当然査定にも響きますが、ほとんどは外装をみて値段を決めます。ですから、オーバーホールをしても価格が上がるわけではありません。また、オーバーホールをしてから日が空いてしまっている場合、その間の分の保証はないので、品質保証という点でもあまり意味がなくなってしまいます。

ただ、アンティークの場合、日本ロレックスの証明書がついていることで価値が上がります。

 

―現行品では偽物のパーツが使われることはほとんどないということですが、アンティークではそういったことがあるのですか?

 

ロレックスのアンティークの場合は、偽物というより年代の違う部品が入っていたりします。あとはパーツを無理やり加工したものであるとか。今はヴィンテージの価格が高いので、昔よりもそういったところに厳しくなっていますね。

実際、ロレックス自身は違う時代の部品が入っていても正規品として価値を認めてくれるのですが、時計に詳しい方や買い取る側の間では、違う時代の部品が入っているものは価値が下がってしまいます。

 

―ほかにも現行品とアンティークの違いはありますか?

 

アンティークの場合は現行品と比べて、針や文字盤を変えてしまうと価値が一気に下がることが多いです。メーカーの側は時計をきれいにしたい一心で針や文字盤を交換しているのですが、やはりアンティークは雰囲気が大事なので、市場価値的にはマイナスです。

 

―メンテナンスにだして価値が下がってしまうこともあるのですね。

 

そうなのです。なので、最近だとアンティークは正規店に出さない方がほとんどです。アンティークロレックスを求められる方のほとんどが、今となっては手に入れることが出来ない(再現できない)仕様・部品がそのまま引き継がれていることに重きを置かれます。一方で日本ロレックスは、過去のものではなく、あくまで「今、目の前のお客様が使うこと」に目を向けています。つまり精度・防水性といった性能や、使用中に不具合を来さないかを重視しているのです。その時点で、ユーザーとメーカーの考え方には根本的なギャップがあります。

 

―製品や使用目的を考慮した方がよいということですね。

 

はい、中途半端に部分的な交換をおこなってしまうのがアンティークロレックスにとっては良くありません。

例えばサブマリーナを見たとき、針は交換して真っ白で蓄光もするのに、文字盤やベゼルにトリチウム夜光の焼けた感じが出ているのでは、アンティーク品としての完成度は低くなります。アンティークロレックスの針の夜光塗料は、トリチウム(1960年代より前はラジウム)という「自発光塗料」を使用しており、放射性物質の為、すでに使用されていません。トリチウムは12年以上経過しますと、ほぼ発光しなくなり、役目を果たさなくなります。

しかし焼けてエイジングが現れる点に希少価値があり、ヴィンテージロレックスファンにとっては、非常に重要なポイントとなっています。それに対して現在は「蓄光塗料」ルミノバが使用されているのですが、ルミノバは良く光るので、ヴィンテージの風合いを損ねてしまいます。そうするくらいなら文字盤やベゼルなど、必要ならケースやブレス、風防も全て交換してしまって、実用品として使うのもありだと思います。

外装パーツの研磨についても、個人的に多少の研磨は必要だと思いますが、形状が変わってしまうほど回数を重ねたもの、深く削るような研磨をしているものは価値が下がってしまいます。
そう考えると、出来るだけ現状の状態のまま、オーバーホールだけ行うことが理想ですが、日本ロレックスには日本ロレックスの正義があるので、なかなか思うようにならないというわけです。もちろん、アンティークロレックスとして販売している個体のオーバーホール・研磨・パーツ交換歴を全て明らかにすることは現実的に不可能ですから、各パーツの経年変化の度合いや全体の「熟成感」のバランスが整うようメンテナンス出来れば良いのではないかと思います。

 

ロレックス  サブマリーナ  Ref. 5513
画像元:かめ吉より

 

 

―アンティークであるほど正規店でしっかりメンテナンスしてもらうものだと思っていました。

 

実は、ロレックスにはもう正規店で修理を受けていないものもたくさんあります。例えばデイトナの手巻き(Ref. 6265)ですと、もう部品の在庫がないそうです。価値が格段に上がっているからこそ、何かあった時の対応が難しいという側面もあるでしょう。とはいえ、ロレックスの部品は市場には豊富にあるので、正規店で修理を受け付けていないようなものでも、民間業者に修理にだせば直せます。

 

ロレックス  デイトナ  Ref. 6263
画像元:かめ吉より

 

―「かめ吉」では、アンティークの修理も受け付けているのですか?

 

はい、2か月ほどの納期で受け付けています。機械式時計はそもそもそんなに壊れませんし、ちゃんと直ります。
ヴィンテージのいいところは60~70年代のものでも毎日使えるところです。むしろ昔のものの方が丈夫だという職人もいるくらいです。

 

―実際はこのような適切なメンテナンスについてあまりよく知らずに購入して使っている方も多いのでは?

 

そうですね、でも現行品のロレックスに関して言えば、壊れるまで使って、それから修理にだしても問題なく直ります。価値の下がるものではないですし。

メンテナンスをして大事に使ったり、実用はせずに飾ったり、あるいは日常用にどんどん身に着けたりなど、人によってロレックスの使い方はさまざまです。ロレックスはどんな方でも受け入れられる時計です。道具として本当に最高だと思います。いい時計をすることで気持ちも変わりますし、皆さんにしていただきたい時計です。

 

 

「丈夫なので日常用にハードに使える。たとえ壊れても直せるところがいいところなので、どんどんつけてほしい」。
ロレックスの実用性は箕浦店長がこう繰り返すほどである。
もちろんその力を存分に発揮させるにはモデルや状態に合わせた定期的なオーバーホールが必要だが、日常的なメンテナンスはほとんど必要ないという。「価値の高いものであるほど手をかけなければいけない」というイメージを見事に覆された読者も多いのではないだろうか。