ロレックスの中でも、デイトナは手に入りにくく、正規店で買うためにはデイトナマラソンと呼ばれる正規店めぐりを長期間続ける必要がある。その道のりは苦しいものだが、欲しい時計を手に入れるためにデイトナマラソンに挑む人は多い。そして、ようやく念願のデイトナを手に入れたあとも、再び辛いマラソンに身を投じる愛好家も少なくないという。今回は、まさにそんな愛好家の一人に話を聞いた。
取材協力:世捨て人さん (https://twitter.com/yostebto)
文:koni 画像提供: 世捨て人さん |
――ロレックスを購入しようと思ったきっかけを教えてください。
高校生の時に、木村拓哉さんがドラマで着用していたエクスプローラーⅠ(Ref.14270)に一目ぼれをしたのがきっかけです。
高校生のうちからこれを目標にバイトをしてお金を貯め、大学1年生のときに晴れて購入できました。
大学入学時に購入した憧れのエクスプローラーⅠ(Ref.14270)
――そんな若くに自分の稼いだお金で購入するなんてすごいですね! その時の心境はいかかでしたか?
原付に乗って一人で正規店に行ったんですけど、自分の、そして世間の憧れの「あれ」が手に入る! と、とても高揚していたのを覚えています。
大学入学時に買って、卒業するまで毎日つけていました。何ならお風呂に入るときも(笑)
就職活動の際に面接でも話題にできてすごく役に立ったので、頑張って購入したかいがありました。
デイトナを購入した時よりもうれしかったです。
今でも今日は気合を入れようという日は、これを着用しています。
――それをきっかけにロレックスに興味を抱かれたんですね。
いや、この1本目のエクスプローラーを購入できた達成感、満足感が凄くて当分時計を購入したいという欲はわかなかったですね。
28歳の時に、2本目となるサブマリーナ(Ref.16610)を購入しました。
それまでは毎日エクスプローラーをつけていました。
――本当にエクスプローラーを気に入ってらっしゃったんですね。なぜサブマリーナを購入しようと思ったのですか。
収入が増えてきたことと、エクスプローラーの次はやはり定番のサブマリーナだろうと思って、思い立ってすぐに購入しました。
そのときも、この2本があれば一生いけるなと、この先はもう買わなくていいやと思っていました。
――でもロレックス沼に今現在もはまっているんですよね(笑)
そうなんですよ。サブマリーナを購入してから9年後、ふとほしくなっちゃったんですよね。ロレックスの相場が高騰しているのを知って、さらにそのプレミアム感に惹かれてしまいました。そこからデイトナマラソンが始まりました。
――マラソンを始めて、すぐにデイトナは購入できたんですか?
いや、最初のデイトナに出会うまでに1年半くらいかかりましたね。
それまでにGMTマスターの青黒(Ref. 116710blnr)と、赤シード(Ref.126600)を購入しました。目的のものとは違いましたが、それぞれ偶然購入できたので嬉しかったです。
9年ぶりに購入したロレックスのGMTマスターを初めて見たときは、ブレスレットの質感とか丈夫さとか、いろいろなところがバージョンアップしていて驚きました。
赤シードを購入したのは、GMTマスターを購入してから半年くらい経ったころで、どうせ俺には売ってくれないんだろうと卑屈になっていた時だったので、出会えたこと自体に感動しましたね(笑)
――その後、ついにデイトナに出会ったときはいかがでしたか?
長い時間はかかりましたが、でもその分「デイトナありますよ」といわれて白文字盤を出されたときは、夢かと思うほど嬉しかったです。
諦めなくてよかったし、コネがなくても、一般人でも買えるんだなと知れました。
やっと手に入ったデイトナは日付がなくてシンプルで小ぶりで、特に手に入りにくい白文字盤であることも相まって本当にかっこよかったです。
―――そのときもまた、しばらくは買わなくていいやと思われたのですか?
いや、そのときにはもうマラソンが癖になっていて、モチベーションが下がることもなく、2日後に再開していました。
再開から1週間後には、グリーンサブ(Ref.116610LV)を購入しました。大きな買い物をこんな短期間で、とは少し思いましたが、断るという選択肢はなく、即購入しました。
当初は奇抜すぎないかと思いましたが、見慣れてきてきれいな緑だなと思うようになってきました。
そしてしばらくたってからレアもののGMTのペプシ(Ref. 126710)に出会い、そちらも即購入しました。出会ったものはすべて購入していますね。
この2本を購入したことで、デイトナの黒文字盤が欲しい気持ちが高まりました。
―――その目標は達成できたのですか?
はい。白文字盤購入から半年後、今度は黒文字盤を購入できました!
出会ったときは、白黒そろったという安心感がありました。
あまり脈がない感じの店員さんだったので、出してくれて目にしたときは信じられなかったです。店員さんに僕でいいんですかと確認してしまいました(笑)
白黒どちらも選べないくらい好きですが、今は白のほうを高頻度で着用しています。
念願の白・黒文字盤のデイトナ
―――白と黒が揃って、今度こそデイトナマラソンは終了したのですか?
いや、これまたすぐにマラソンを再開しました。
もう病気なんでしょうね(笑)マラソン中毒なのも、即決で購入するのも。
ほかの買い物だったらすごく優柔不断なんですけどね。ロレックスは一期一会の出会いなので、逃せないです。
そして再開後、GMTマスターの茶黒コンビ(Ref.126711CHNR)を購入しました。今まで持っていたものとは違うタイプなので気に入っています。
これを購入した後は、covid-19の流行もあってマラソンはお休みしています。
――デイトナマラソンを続けるコツはありますか?
マラソンは修行ですよ。時計について1日中考えちゃいますし。
ゴールが見えないことや、なかなか購入できなかったりとか、店員さんが塩対応だったりしたことで心が折れそうになったことは多々あります。
でも、現在たくさんの時計に出会えましたし、新人の店員さんや冷たい店員さんが商品を出してくれたりとか、仲良くなった店員さんがざっくりとした入荷日とかの裏情報を教えてくれたりとかするので継続は大事だと思います。
辛い道のりですが、何か信じられるものに向かって無心で走るのがコツかもしれません。
――とても重みのある言葉ですね。またマラソンは再開する予定ですか?
原点のデイトナ2本というのは達成できたので、今までよりはゆとりをもってだとは思いますが、今でもほしい型がありますし、また新作が出たら欲しくなってしまうと思うので、きっとまた再開するでしょう。
一生続けていくと思います。
ロレックスはわがままな女性みたいなもので、なんでもいいなりになっちゃうんですよね(笑)
やっぱりこの魅力にはかなわないです。
いつも左腕から活力をくれる時計たち(Ref. 126710)
高校生のときに一目ぼれし、そこからロレックスとともに歩み始めた人生。入手してしばらくは満足できていても、そのうち新たなロレックスが欲しくなるというのは、多くのコレクターが共感するところだろう。辛いデイトナマラソンも、達成したときの喜びが大きいために癖になってしまうというのは、本当のマラソンと同じ。もはやマラソンそのものも、趣味のひとつになっていると言っても過言ではない。それもまた、ロレックスを集める楽しみであるのは間違いない。