衝撃的な出会いというのは、いつまでも忘れられないものである。今回取材したコレクターは、20年前に雑誌で初めて見たロレックスが今でも忘れられないという。今回はその忘れられない出会いと、その後の時計愛好家としての考え方の変遷について、詳しくお話を伺った。
取材協力:Syutaさん (https://www.instagram.com/nico19850208/)
文:モカ 画像提供:Syutaさん |
ーー時計自体はいつから好きだったんですか?
中学生の頃からです。3つ上の兄がいるのですが、兄がファッションに興味を持ってファッション雑誌を買うようになり、私も一緒にそのファッション雑誌を見るようになりました。そこで時計を好きになり、当時Gショックが流行っていたので集めるようになりました。家の手伝いをしてもらったお小遣いやお年玉を貯めて、時計を買っていました。
ーー早くから時計に魅力を感じていたんですね。
小さいときから、兄はお小遣いをお菓子やジュースに使っていたのに対して、自分はガチャガチャとか形が残るものにお金を使っていました。
ファッションに興味を持った時も、服は成長すると着られなくなってしまいますが、時計は一度買ったらずっと使えるものなので、人生を共にできるというところに惹かれました。
ーーGショックとロレックスは結構ギャップがあるように思いますが、ロレックスに興味を持ったきっかけはどのようなものでしたか。
中学生のときにファッション雑誌を見ていたら、たまたまロレックスが載っているページが目に留まりました。それまではGショックのようなデジタル時計ばかりだったのですが、そのとき初めてアナログ時計をかっこいいと思いました。
当時はロレックスという名前だけは知っていましたが、どんな時計かはまったく知りませんでした。単純にデザインに惹かれて、次はこの時計を買おうと思って値段をよく見たら、40万円くらいしてびっくりしたのを覚えています(笑)
その時に目を奪われたのがGMTマスター(Ref.16700)の赤青ベゼルでした。
ーーそれでロレックスに目覚めたのですね。
そうです。ロレックスというよりアナログ時計全般ですね。ロレックスを見て心を奪われ「アナログ時計かっこいい!」ってなりました。そこからファッション誌を見てアナログ時計の研究をし始めました。
そうするとオメガとかタグホイヤーとか有名なブランドが出てきて、その中でもオメガのシーマスターのアンティークがお手頃な価格で手に入るということがわかり、それを中学三年生の時に買いました。
ーー結局ロレックスを買ったのはいつだったんですか?
GMTマスターのことを初めて見た時からずっと忘れられなくて、大学一年生の時にアルバイトをたくさんしてお金を貯めました。
クォークというお店にロレックスを見に行くと、ショーケースには僕が欲しかったGMTマスターはありませんでした。当時はとりあえずロレックスが欲しくて、やっとお金も貯まったというところだったので、一番お手頃だった中古のエアキング(Ref.14000)を買いました。
ーー最初に買ったのはGMTマスターではなかったのですね。
実はそうなんです(笑)
しかしその3週間後にまたクォークさんに行く機会がありました。当時、木村拓哉さんがエクスプローラーⅠ(Ref.14270)をつけていて爆発的な人気がありました。それを見た友達もロレックスを買うと言い始めたので、一緒にクォークさんに行ったのですが、その時になんとGMTマスター(Ref.16700)が入荷していたんです!
「僕が欲しかったモデルはやっぱりこれだった!」と思い、エアキングを下取りに出して、差額分はローンを組んでGMTマスターを買うことにしました(笑)
大学生の時に購入したGMTマスター(Ref.16700)(左)
ーーそれほどGMTマスターのインパクトが強かったのですね。
そうですね。赤と青の綺麗なベゼルと、ちょっと大人びた雰囲気に惹かれました。初めてGMTを見た雑誌は今でも家にあるんですけど、初めて見たときのことは強烈に覚えていますね。
ーー今でもそのGMTマスターはよくつけられるんですか?
いえ、GMTは売ってしまいました。1番多いときは10本くらい時計を持っていたのですが、あるときヴィンテージエクスプローラー(Ref.5500)が欲しいと思い、その時計を買うために持っていた時計を売ってしまったんです。特殊なエクスプローラーでとても高額だったので、普通のサラリーマンのお給料だけでは買うのが厳しかったんです。
今ではGMTを売ってしまったことを後悔しています。
ヴィンテージエクスプローラー(Ref.5500)
ーー今後、そのレアなヴィンテージエクスプローラーを筆頭に、さらにコレクションを充実させていくのですか。
実は今持っているチュードルのレンジャー(Ref.7995)の34ミリという小ささが、自分の腕に合っていてつけやすいので、その時計があれば十分かなと思っています。
若い頃は時計が大きくて重くてもファッション重視だからよかったのですが、今はフィット感を重視するようになりました。
今の気持ち的にはコレクションしたいというより、自分に合う時計を見つけていきたいという方が大きいですね。
自分の腕に1番フィットするというチュードルのレンジャー(Ref.7995)
かつて中学生のときに一目惚れしたGMTマスターへの思いを持ち続け、大学生になってついにそれを手に入れ、さらにヴィンテージエクスプローラーへとステップアップしたSyutaさん。その後、素の自分にもっとも心地よい時計としてチュードルにたどり着いたのだという。ファッションとしてのかっこよさ、レアアイテムとたどってきたからこそ、素直な気持ちで自分に一番合う時計があればいいと言えるのだろう。これもまた、紛れもなく純粋な愛好家の姿だ。