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ロレックスの価値はその背景にある

 

コレクターの考え方は千差万別だ。多くのコレクターが、多様な観点からロレックスの「良さ」をそれぞれに楽しんでいるが、今回は、ロレックスの時計が持つ「背景」に強く惹かれているというコレクターに、「背景」の価値とはどのようなものなのか、詳しく聞いた。

 

取材協力:jyukucyoさん(https://www.instagram.com/mf08sp/

文:マピ

画像提供:jyukucyoさん

 

ーーロレックスコレクターの道に足を踏み入れた経緯を教えてください。

 

かなり前から腕時計が好きだったのですが、当初私が集めていたのは、日本のブランドの時計でした。ビジネスのときにも、国産の電波ソーラーやGPS時計を愛用していました。

そんな時、国内外の機械式の高級時計もそろそろ経験したいと思いまして。実は、妻が学生時代からロレックス愛好家だったこともあって、そのことを相談してみたところ、もちろんロレックスを勧められました。それがきっかけです。

妻と一緒に正規店に行き、いくつか試着してみたんですが、ヨットマスター(Ref. 116622)が非常にしっくりときました。それが最初の一本だったのですが、これを手に入れてからあっというまに、ロレックスの魅力にはまっていきました。

現在の愛機ヨットマスター40(Ref. 126622)とファーストロレックスのヨットマスター(Ref. 116622)

 

ーー具体的にはヨットマスターのどのような点に惹かれましたか。

 

 まずは大変稀少価値の高いプラチナがベゼルに使用されているところ、そして船上のセレブユーザーをターゲットとした、ラグジュアリースポーツモデルという位置付けが非常に気に入りました。また、貴金属の中でも高価で、硬く、強い耐食性を持つダークロジウム文字盤と、ティファニーブルー針が醸し出す、唯一無二の素材感とデザイン面がとてもクールなモデルだと思っています。

ラグジュアリーな場面や海辺を訪れる際に好んで使用しているヨットマスター(Ref. 126622)

 

ーー現在使っているのは、ロレックスばかりですか?

 

いいえ。基本的に仕事の時は今も国産時計を使っています。

プライベートで出かけたり、交流の場に行く時にはロレックスを使っています。

 

ーー国産の時計も使用されているんですね。国産時計とロレックスは、使っていてどのような違いがありますか?

 

国産の時計はやはり正確で時刻に寸分の狂いもありません。時間を知る機能面では非常に優秀な工業製品だと思います。高精度かつ低価格の腕時計の製造は、日本企業でしか実現できないのではないでしょうか。それと、シンプルなデザインで、着ける人や場所を選ばないのも国産の長所ですね。

一方ロレックスは、プライベートで使用するラグジュアリーなものです。海外時計にも多くのブランドがありますが、その中でもロレックスはまず間違いがなく、どのような社交の場に着けていっても恥をかくようなことはありません。

加えて、ひとつひとつのモデルの背景にあるストーリーや開発のコンセプトがとても魅力的です。

ロレックス愛好家の先輩である奥様との一枚。

レディジャストと青サブマリーナ(Ref.116613LB)

 

ーーロレックス製品ひとつひとつの背景、ですか?

 

そうです。ロレックスはそれぞれのモデルにストーリーが存在するんですね。

資産的価値や貴金属的な価値を超えて、その時計が誕生した背景にこそ価値があると私は思います。

海外では当たり前の価値観だと思うのですが、「文化的価値や、その製品の製作者への敬意として代金を設定し、納得の上支払う」という考え方があります。そのような観点からすると、ロレックスは非常に価値があると言えます。

そのような価値ある時計だけが持つ背景こそが、身に纏った人の品位を高めてくれると考えています。特にロレックスは、人を育てる特有の力を備えているように感じますね。

 

ーー「人を育てる」とはどのようなことでしょうか。

 

ロレックスのような、様々な価値や希少性を有し、モデルごとにその開発秘話や伝説を備えた「本物という物語」を身に纏うことで、自分自身の振る舞いも自然とそれに相応しい方向に変化させてくれると思います。

そもそもロレックスは安価なものではありません。それに、近年の人気高騰により入手困難なモデルも多いです。つまりは、手に入れる段階で、それ相応の努力をしなくてはなりません。また、製品の持つ背景を学んで、理解する必要もあります。

そのように、努力して自分のものとしたロレックスを身に着けることで、自身のブラッシュアップにもつながっていく。そして、それこそがロレックスの最大の魅力と言えるのではないでしょうか。

 

ーーなるほど。ロレックスにファンやコレクターが多いのも納得です。

 

実は、私はロレックスのコレクターにぜひおすすめしたいことがあるんですよ。

ロレックスコレクターの方は、ロレックスのみを集めていたり、ロレックスとそれ以外の海外ブランドの時計を集めていたりするスタイルが多いと思うのですが、私はぜひ国産の時計にも目を向けていただきたいなと思いますね。

私見になりますが、時計というカテゴリの中で、日本特有の文化と技術力で育った国産時計と、諸外国の時計とでは似て非なるものと捉えています。それゆえに、両方使用してみることでお互いの良さが引き立つと思いますし、視点が増えて新しい魅力にも気づくことができるかな、と思います。

 

ーーたしかに、どちらか片方しか知らないよりも広い視野が持てそうですね。ご自身の今後のコレクションについて、展望を教えて下さい。

 

私は、時計は身に着けてこそだと思っているので、必要以上に増やすつもりはあまりありません。現状、ロレックスは全部で4本所有していますが、先ほど言ったとおり、ロレックスは基本的に週末しか使用しないので、全部を満遍なく着けるには2週間ほどもかかってしまいます。一本の腕に時計は一個しか着けられないですからね(笑)

 

ーーでは、今後はあまり増えなさそう、と。

 

もう欲しいモデルは制覇したような感じはありますしね。

強いていうなら冬に着ける用の、モデルチェンジが予想されているエクスプローラーⅠの新型が欲しいですね。ヨットマスターは、夏にはいいですが冬には爽やかすぎるかな、と思うので(笑)

 

ロレックスの価値や背景、それに対する思いを熱く語る一方で、国産時計の併用をすすめるjyukucyoさん。それぞれの優れた点を活かして使い分けることで、それぞれの価値をより強く実感することができるというのは、非常に納得がいく話だった。ロレックスへの熱量の高さと実践上のバランス感覚を兼ね備えた、大人のコレクターのあり方のひとつだと感じた。