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人生最後の一本に迷わず選ぶ、唯一無二のデイトナ

数あるロレックスの中でもその入手困難ぶりを誰もが認めるデイトナ。その希少性からか、この時計との出会いには、運命的なエピソードが語られることが不思議と多い。自然と、デイトナを「特別な一本」に選ぶコレクターの話を聞くことも多いのだが、今回お話をうかがったコレクターも、とりわけデイトナへの思い入れが強いという。その背景には、やはり入手困難性と運命的な出会いのエピソードがあった。

 

――時計を集め始めることになったきっかけを教えてください。

 

実は、私はもともとは時計というよりG-SHOCKが好きだったんです。私が若い頃、G-SHOCKブームが起こって、G-SHOCKが社会現象というか、世界中で大人気になっていました。私ももともと収集癖があったことや、限定品という言葉に弱かったこともあって、G-SHOCKにハマってしまいました。その頃はG-SHOCKを30本ほど買い集めて保有していましたね。

時計は毎日つけるものですから、買い集めたG-SHOCKを肌身離さず身に着けて愛用しているうちに、すぐに時計そのものの魅力に気が付きました。それから時計雑誌などを読むようになり、本格的に時計にハマって、いろいろと買い集めるようになりました。

 

――はじめはG-SHOCKだったのですね。そこから集め始めて、現在お持ちの時計の中で、思い入れの深い時計は何かありますか?

 

デイトナです。デイトナに興味を持ったのは、21歳の時に時計雑誌で見かけたのがきっかけでした。当時の時計雑誌は、ロレックスに関する記事のページがとても多く、その中でもデイトナはよく取り上げられる人気の時計でした。私自身も記事を見て興味を持って、デイトナが欲しいと思ったのですが、当時の私の財力ではとても手が出せず、結局はエアキングのピンク文字盤を購入しました。これもかなり背伸びをしたのですが、そこから、いつかはデイトナを!と言う思いが強くなりました。

それからもSEIKOからIWCまで、次第に財力も付けながら、幅広く時計を購入していきました。

 

特に思い入れの強いデイトナ116520

 

 

――なるほど。結局デイトナを手に入れられたのはいつだったのですか?

 

ちょうど5年前です。実は、5年前に父が亡くなったのですが、私は父の遺産を形あるものに変えて、形見としてずっと持っておきたいという思いを強く持っていました。

その形見の形として、時計を考えていたので、葬儀が終わった後に時計を見に横浜の高島屋に行きました。時計売り場で、何の気なしにデイトナがあるか店員の方に聞いてみると、なんと、あるという答えが返ってきたんです。特にその店舗の常連というわけでもなかったので、裏からデイトナが出てきた時は本当に驚きました。

20年前に憧れても買えなかったデイトナを、このタイミングで見つけることができたことに運命的なものを感じ、その日のうちにすぐに購入しました。

 

デイトナをつけるyas.oniheadさん

 

――お父様の形見を探しに行ったところで奇跡的な出会いを果たしたというわけですね。それは確かに運命的と呼ぶしかないように思えます。それは思い入れも深いでしょう。

 

そうなんです。

実は、私自身も昨年から病気を患い、入退院を繰り返しています。そんな状況なので、自分にもしものことがあった時に大量の時計を残されても家族が困ると思い、コレクションの整理を始めました。一時期は40本ほどあった時計を、今では7本にまで減らしました。

 

――そうだったのですか。今残している時計には、何か共通点はあるのですか?

 

自分がファーストオーナーであるものは特に思い入れが強いので、残しているものが多いですね。もちろん、デイトナもそのうちの一本です。

 

――その選び抜かれた7本は、どのように楽しまれているのですか?

 

寝る時も含めて、24時間時計をつけ続けています。実は入院中も病室に時計を持ち込んでいるんですよ。入院中は、病院や周りの迷惑にならないように、2本だけ持ち込んでいます。2週間毎に妻が別の時計を持ってきてくれるんですよ。

 

――それはとてもいいですね! 飽きも来にくいでしょうし、適度にすべての時計を手入れできますよね。

 

はい。病室のベッドで寝ているだけの退屈な入院生活での唯一の楽しみが、時計の手入れです。愛着のある時計の手入れをしている時間だけは、何も考えなくて済みます。

今でもかなり時計を絞り込んでいますが、もしもさらにこの中からさらに絞って、最後の一本を選べと言われたら、迷わずデイトナを選びます。20年越しに購入できたことや、出会いが特別だったこともあって、やはりデイトナだけは特別思い入れが強いんです。

 

病室に持ち込んでいる2本の時計

 

今回のインタビューを通して、いかに時計が人生と共にあるかを考えさせられた。時計は人が若いうちから憧れの対象となり、それから時とともに人は成長し、経験を積んだり財力をつけながら時計との出会いを重ね、そのうちの一本が何かのきっかけでその人にとってかけがえのないものになっていく。そんな時計は、きっと人生の支えとすらなりうるのだろう。そんな時計と出会うことができた人は、それがどんな時計であっても、時計愛好家としてはこの上なく幸せな人なのだろうと思えた。

取材協力:yas.oniheadさん

文:masa

画像提供:yas.oniheadさん